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本当はもっと恐ろしい肥満――脂肪が死を招く要因が次々と明らかに
AP通信
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/technology/story/20040520304.html
2004年5月11日 2:11pm PT 脂肪の実態を調べる研究によって、肥満が死を招く要因について驚くべき知見が加わりつつある。明らかにされた重い事実、それはなんと、脂肪それ自体が健康に有害な働きをするというものだ。専門家たちはもう何十年も前から、太った人が早死にする傾向にあることを知っており、その理由は明白だと長い間考えてきた――余分な体重のせいで、心臓や他の臓器にひどく負担がかかるからに違いないと。
しかし、それは間違いだったようだ。贅(ぜい)肉の物理的負担は、たしかに関節炎や睡眠時無呼吸などの原因になるが、その程度のことは、現代人の体についた、かつてない量の油っぽく黄色い脂肪のかたまりが及ぼす複雑で隠れた悪影響に比べれば、些細なものでしかない。最近の一連の発見によって、脂肪を蓄積する細胞が、体のエネルギーバランスを微調整するさまざまなホルモンやその他の化学的な伝達物質を作り出していることがわかった。だが、脂肪で膨れあがった細胞から大量に分泌されると、それらの物質は多くの臓器を攻撃し、健康に悪影響を与えるようになるという。詳しいメカニズムはまだ解明途上だが、こうした生物学的な相互作用の異常が、心臓病や脳卒中、糖尿病、ガンなど、特に肥満の人に共通した疾病による死亡率を高めていることは間違いないと研究者たちは述べている。
「われわれはもはや、脂肪組織をただ黙って脂肪を蓄えておくだけの場所とは見ていない。体の他の部分に送る信号物質を盛んに製造している場所だ」と、コロンビア大学のルドルフ・ライベル博士は話す。脂肪が単なる不活発な贅肉以上の存在であることが初めて本格的に示唆されたのは、10年前にレプチンという物質が発見されたときだった。一見何もしないように見える脂肪が、食欲を制御するこの化学物質を作り出すことで自らを維持管理していることを知り、研究者たちは驚いた。今では、レジスチンやアディポネクチンなど、約25種類の信号物質が脂肪細胞によって作られることが判明しており、この先さらに多くが発見されることは間違いないとライベル博士は見ている。
米国立衛生研究所(NIH)に付属する糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)の責任者、アレン・スピーゲル博士は、脂肪について次のように話す。「その正体や働きについての情報は急激に増えている。とてつもなく活動的な器官だ」。今や脂肪組織は最大の内分泌器官と認識され、それが体に占める割合は普通の体格の人でさえかなりのものだ。健康的な女性で身体の平均30%、男性では15%を脂肪が占める。これだけのエネルギーがあれば、人間は3ヵ月間何も食べなくとも生きていられる。
脂肪細胞の主な仕事は、摂りすぎたカロリーを脂肪として蓄積することだ。太ってくると、脂肪細胞が脂肪で膨れあがり、通常の大きさの3倍にもなる。太りすぎの人がなおも太り続れば、そうした脂肪細胞の上にさらに多くの脂肪細胞が層をなしていく。問題は大きくなりすぎた細胞が出す化学物質の量にあると、ルイジアナ州立大学のジョージ・ブレイ博士は語る。「大きくなった細胞は、小さかったときに比べ、すべての分泌物を多く出すようになる。そうした分泌物が増えることは、健康によくない」。そうした過剰な分泌物が人体にどう害を及ぼすのかを正確に知ろうと、多くの研究者が努力を続けている。詳細がわかれば、肥満の蔓延がもたらす本当の悲劇、肥満が健康に与える悪影響を解き明かすヒントとなり、おそらくは解決策の発見にもつながるだろう。
肥満は、米国人の寿命を縮める主な要因として喫煙のすぐあとにつけており、その割合も増加している。中程度に肥満した人の場合、平均寿命は普通の人より2〜5年短いという。重度の肥満の場合、寿命は5〜10年ほども短くなる。肥満がもたらす最大の脅威はなんといっても心疾患だ。体格指数(BMI)[体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値。22が標準]が30を超える人は、心臓病になる危険性が通常の3倍となる。専門家によれば、脂肪細胞が分泌する化学物質は、さまざまな形で心臓発作や心不全、心停止を引き起こす原因になるという。たとえば、体重過多が血圧を上げることは以前から知られている。かつて医師たちは、これは物理的な問題と考えた。余分な肉に栄養を送る(日本語版記事)ため何メートルか伸びた血管に血液を送り出すには力が必要というわけだ。
しかし今では、脂肪が高血圧を引き起こすのは、いくつかの化学的要因を通じて血管を狭くするためであることが判明している。たとえば脂肪は、強力に血管を収縮させる物質、アンギオテンシノーゲンを作り出す。同時に、交感神経も刺激するが、これも循環系を収縮させる。これらの作用はしかも、脂肪が及ぼす影響のほんの一端に過ぎないかもしれないのだ。「これは非常に複雑なシステムで、知れば知るほど複雑さが増していく」と、ニューヨークにある聖ルカ・ルーズベルト病院の肥満研究センター責任者、ザビアー・ピスンヤー博士は話す。膨らみすぎた脂肪細胞がもたらす明白な害の1つに、体内でのインシュリンの製造と使用への影響がある。インシュリンは、筋肉にエネルギーを燃焼し、脂肪細胞にエネルギーを蓄積するよう指令を出すホルモンだ。肥大した脂肪細胞は、血中に脂肪を漏出させることなどによって、インシュリンの作用を鈍らせる。そこで膵臓は、その埋め合わせをするために、より多くのインシュリンやその他のタンパク質を作らなければならなくなる。今では、インシュリン分泌量の増加――インシュリン抵抗と呼ばれる状態の一環――が特に有害であることが、研究者たちの間で認識されている。インシュリンの増加は、動脈壁に直接ダメージを与え、血管が詰まる原因となり得る。
漏れだした脂肪は心筋にも浸潤し、鬱血(うっけつ)性心不全を引き起こすことがある。本来の場所でないところに脂肪が蓄積することは、肝臓へのダメージも引き起こす。脂肪の蓄積は肝臓移植の理由としてB型肝炎に次いで多い。脂肪細胞が分泌するさまざまなタンパク質はまた、炎症の原因にもなる。特に動脈の硬化が始まった部分に壊滅的な作用を及ぼし、血管を破裂させて心臓発作や脳卒中を引き起こすことがある。これらの炎症性タンパク質や、成長ホルモンといった、脂肪に関係するその他の化学物質の働きは、肥満のもたらすさらに恐ろしい結果――ガンの発病――に関連があるとも考えられている。
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