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6月25日に開幕した全英オープンテニス、通称“ウィンブルドン”。
ロンドン郊外にある静かな高級住宅街・ウィンブルドンは、1年のうちこの時期だけ世界中からたくさんの人が集まり、活気に満ち溢れる。
ところで、テニス用語には謎が多い。例えばポイントひとつとっても「0をラブっていうのはなぜ?」(→一説ではゼロが卵の形に似ていることから、フランス語で卵の意味の“レフ”が転じたらしい)とか、「15、30と15刻みのあとに40になるのはどうして?」(→こちらは、試合中に審判が45「フォーティファイブ」とコールしづらいから40「フォーティ」と言うようになったという説がある)、とか。
そんな謎のひとつとして、高校のテニス部時代からずっと気になっていたことがある。負け審判(負けた方が主審をする通称“マケシン”。負けたうえに審判をさせられる残酷なシステム)」を僕が毎試合のようにやっていたとき、どうコールすればいいのか迷っていた言葉。それは……。
「“サーブ”なのか? “サービス”なのか?」
最初のショットを、「サーブ」とも「サービス」とも言う。サーブを打つ人は「サーバー」であって「サービサー」じゃない。とはいえ「サービスエース」や「ファーストサービス」などとも言う。果たして本来はどっちなんだろうか。長年の謎を解くため、日本テニス協会に聞いてみた。
質問者、つまりサーバーの僕が質問。
「サーブとサービス、どちらが正しいんですか?」
レシーバーのテニス協会が答える。「規定として設けているわけではないですが、日本テニス協会が発行しているルールブックでは、すべて“サービス”で統一しています。ただし、サーブと呼んでもサービスと呼んでも問題はないです」
どうやら、サーブでもサービスでも用語としては正しいようだ。なんだかふわっとしたロブを打たれた気分。さらにレシーバーは言った。
「でも、英語では“サーブ”と呼んでいます。ウィンブルドンでも“サーブ”です。サービスっていう言葉は、知っている限りでは日本独自のもののようですよ」
お〜〜。ざわめく会場。
ラリーはさらに激しさを増す。
「じゃあなぜ、日本ではサービスなんですか?」
「私の聞いた話なんですが、海外から日本へテニスが入ってきたときはサーブだったらしいんです」「それがどうして?」「テニスのサーブって、2本までありますよね。そこで、サーブを複数形にした単語として“サービス”と呼ぶようになったようです」強烈なスマッシュが決まった。場内から沸きあがる拍手。あくまでも一説らしいが、なんだか納得させられた。
海外がサーブで、日本がサービス。そしてサービスは複数形ってことで「ゲームセット」。
気になって、海外のテニス中継を見た。確かに「ファーストサービス」じゃなく「ファーストサーブ」、「サービスエース」じゃなく単に「エース」と表示されていた。(イチカワ)
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