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細胞内でたんぱく質を加工したり、たんぱく質の行き先を振り分けている小器官「ゴルジ体」が働く仕組みを、理化学研究所などの研究チームが解明した。仕組みを説明するモデルは2説あったが、横河電機などと共同開発した新型レーザー顕微鏡で生きた細胞を実際に観察し、細胞生物学の十数年にわたる論争に決着を付けた。英科学誌「ネイチャー」の電子版に14日発表した。
ゴルジ体は平たい袋状の膜が重なった構造をしている。細胞の中で作られたたんぱく質は、この膜の中で糖や脂質を付加され、機能に応じて細胞内外に送り分けられる。研究チームは、酵母のゴルジ体で働く酵素を赤や緑の蛍光物質で染め、新型顕微鏡で観察した。
その結果、働く酵素の種類に応じて膜の性質が変化し、たんぱく質に作用することが分かった。変化の過程で、膜同士の融合や分離が起きることも明らかになった。膜は安定した状態で存在し、たんぱく質がその間を移動する過程で糖などが付加されるとする説もあったが、今回の研究で否定された。新型顕微鏡は、生きた細胞に約1000本のレーザービームを当てる。100分の1秒ごとに100ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の解像度で撮影し、三次元動画にもできる。研究チームの中野明彦・理研主任研究員は「薬が細胞の中でどう働くかなど、新薬の開発や生命科学に幅広く応用できる」と話す。【須田桃子】毎日新聞 2006年5月15日
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