|
【ワシントン16日共同】脂肪吸引手術でおなかの脂肪を大幅に減らしても糖尿病や心臓病の危険は減りません−−。こんな研究を米ワシントン大のグループが米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに16日、発表した。
米国では成人の半数以上が太り過ぎで、年間に推定約40万件の脂肪吸引手術が行われている。腹部の脂肪の量は糖尿病などと関連があるとされ、まとまった量の脂肪を取り除けば病気の予防にも役立つのでは、との指摘もあったが「やはり地道に減量するしかない」と結論づけた。
グループは、体重100キロ前後で高度の肥満と診断された女性計15人(うち糖尿病患者7人)の腹部から5・4−13・8キロの皮下脂肪を吸引する手術を実施。その後2カ月以上にわたり、インスリンに対する血糖値の反応や、コレステロール値、血圧など糖尿病や心臓病などに関連する十以上の検査を行ったが、手術前と比較して改善はみられなかった。URL=河北新報 2004年06月17日
脂肪吸引法にインスリンの働きや冠動脈心疾患の危険因子に対する効果はない
Absence of an Effect of Liposuction on Insulin Action and Risk Factors for Coronary Heart Disease S. Klein and others
N Engl J Med 2004; 350 : 2549 - 57
背景:脂肪吸引法は,肥満合併する代謝異常に対し,可能性のある治療法として提案されている.腹部肥満女性において,腹部の大量脂肪吸引が,冠動脈心疾患の代謝に関連する危険因子に与える効果を評価した.
方法:肥満女性 15 例において,腹部脂肪吸引前と吸引の 10〜12 週後に,肝臓,骨格筋,脂肪組織のインスリン感受性(グルコースクランプ法と同位体トレーサー法で評価),炎症性メディエータの濃度,およびその他の冠動脈心疾患の危険因子について評価した.女性 8 例は耐糖能が正常で(体格指数の平均 [±SD],35.1±2.4),7 例は 2 型糖尿病であった(体格指数 39.9±5.6).
結果:脂肪吸引法により,腹部の皮下脂肪組織量は,耐糖能が正常な被験者で 44%,糖尿病被験者で 28%減少した.脂肪は,経口ブドウ糖負荷試験で正常値を示す被験者で 9.1±3.7 kg(全脂肪量の 18±3%,P=0.002),2 型糖尿病被験者で 10.5±3.3 kg(全脂肪量の 19±2%,P<0.001)減少した.両群とも,脂肪吸引法によって,筋肉,肝臓,脂肪組織のインスリン感受性(それぞれ糖消失量の増加,糖新生の抑制,脂肪分解の抑制で評価)に有意な変化はみられず,C 反応性蛋白,インターロイキン 6,TNF-α,アディポネクチンの血漿濃度にも有意な変化はみられなかった.また,冠動脈心疾患の他の危険因子(血圧およびグルコース,インスリン,脂質の血漿濃度)に対する有意な作用も認められなかった.
結論: 腹部脂肪吸引法では,肥満に関連した代謝異常に有意な改善はみられない.脂肪組織量を減らすだけでは,体重減少でみられるような代謝面への利益は得られない.
|
|