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地球にない生命体、作れる可能性…理研が成功
細菌から人間まで地球の生命体がほぼ共通に使っている生命活動の言葉「遺伝暗号」とは全く別の言葉を作りだし、生物の細胞内で起きているのと極めて似た反応を起こすことに、理化学研究所の平尾一郎チームリーダーたちが世界で初めて成功した。研究が進めば地球上にいる生物とは違った生命系統を作り出せる可能性もあり、今後波紋を広げそうだ。米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー2月号に掲載される。
生命の設計図とされる遺伝情報は、4種類の化学物質(塩基)A、T、C、Gで書かれている。たとえば人間の塩基の数は約30億個で、この並び方をもとに細胞内で生命活動を支えるたんぱく質ができる。並び方の単位は塩基3つからなる遺伝暗号。それぞれに対応して、たんぱく質の部品(アミノ酸)の種類が決まる。ただ暗号の種類が限られているため現存生物が使うアミノ酸は20種類。平尾さんたちは、人工的な塩基としてS、Yを合成し、これに従来の塩基をつなげて新たな遺伝暗号を作り、細胞の中と似た状態にした試験管の中で、通常の生物は使わないクロロチロシンというアミノ酸を持ったたんぱく質を合成させることに成功した。
天然には存在しないたんぱく質を作る新たな手法となるほか、なぜ地球の生命体がA、T、C、Gという塩基だけを使っているのかという究極のなぞ解明に役立つ可能性もあり、三浦謹一郎・東大名誉教授は「人工塩基を働かせて現存の生命とは違う生物を作り出すことを可能にする研究で興味深い。人間には応用しないなど倫理的な配慮も必要だろう」と話している。(読売新聞)
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